carriere 『桜華』 桜華編まとめ  命の価値を(ネタバレ有で戯言風味)

久し振りに声だけを基準にゲームを買ってしまった。しかし出来そのものとは関係無いところで色々と興味深い内容でして。さて、どう料理してやろうか。




異能ものとしてはそれほど突飛な設定ではなく、絶対的なパワーソース(霊木)と力を引き出す末端兼フィルタ(守人)、その反作用(代償)という構図。桜華編ではいわゆる悪や敵というのは存在せず、障害になるのは世界観に関わるシステムそのものである、と。紗雪の場合は異界、ソルネの場合は物神、夏輝の場合は災害(ひいては禍風か)、あやの場合はちょっと違って失踪した唯ということになる。(あや編が若干異色である件は後述)


明確で倒すことの出来る敵が相手なら、協力するなり修行するなりでスッキリ終わることも出来ますが。
システム相手であるとどうにもならない問題が多くて、何かを引き替えにしたりしなきゃならない。それがキャッチコピーであるところの「悲しくて優しい」なんでしょう。意外に一筋縄ではいかない作品に仕上げてきました。 霊木を中心にするシステムに翻弄される命を多面的に書く、というのは成功してるかな。アプローチの違いが面白い。彼らが家族と呼ぶ運命共同体が魅力的に見えるかどうかが良作/凡作判定のボーダーラインっぽい。


・紗雪編
この子、他のシナリオで全然絡まないのはやっぱり力が強すぎるからでしょうね。黄金の霧にかかれば禍風もイチコロっぽいし。夏輝編の死悲の咆哮も本気になれば止められたんじゃないか、とか思ってしまいます。旧作では居なかったようなので若干設定に無理を生じるのは仕方ないか。
エピローグは桜華編で一番綺麗な終わり方だったと思います。永遠という課題を抱えた物語は数あれど、逃げを打たない作品は意外に少ない。「停滞しても寂しさは消えないから、大切なものを見つけ続ける」というのは、永遠を理解出来ない人間にとって納得出来るギリギリの境界じゃあるまいか。
その中に紗雪の居場所があったのも救い。同じく永遠を抱えているソルネ、刃菊、作中では見えないけれど聖菜さんも同種だ。そして何より自分と優夜の血を継ぐ家族達。自分の血を継ぐ子孫を守る存在、ってのはいよいよ神に近付いている気がしますが・・・それこそ彼女の運命。守ることを知って高位の存在になるなんて、後世から見れば神話のような物語なんだろうね。


・夏輝編
レイプネタは個人的に辛いのでなんか身が入りませんでしたが・・・彼女の優夜に対する包容力はトラウマに起因する物というのは見え見え。しかしあや編を見る限り、唯失踪の真実を知りながら隠してたことも関係するようですね。中盤の構造は唯の心理状態をなぞってる。意図的か?
自分の命に関する選択肢にあっさり(死ぬ方向で)結論を出す辺りは主人公らしいのですが、洋上でこれまたあっさり生き残る方に鞍替えするのは・・・そうだな、結局優夜にとっては「家族の想い」が一番重要だってワケだ。(紗雪編でも最後の決定打は家族との話し合いだし)


・ソルネ編
夏野こおり超グッジョブ。怒った時の演技なんかは特に上手い。芸域の広さ演技の上手さがこれだけレベル高い人は(裏には)そういないッスよ。
途中経過としては紗雪と同じ流れ(永遠故に絆を恐れる)なんですが、結論としては紗雪編とは全く逆の、全力で運命から逃げてみた感じのエンディング。死にかけのマスターが命を代償にしたところで人間化の奇跡が起こせるのか、という問題はありますがその辺は霊木の欠片の力ということで。ホント、あや編といい夏輝編といい霊木には限界も見境もないですねぇ。(元々そういう存在か)
でもいい加減な感じではなく、むしろ話としては一番丁寧であるかな、と。ただ与えられた奇跡というより試練と言う扱いであるし、百年生きた彼女が「人間になりたい」と言った、ささやかな願いを叶えてあげてもイイのではと思います。
やっぱりモチーフは動き続ける「大きな古時計」なんですかね? メインヒロインっぽい扱いだけど特にそんな感じは・・・あ、そうか。紗雪編での永遠の解決法の上位互換として(過程はどうあれ、共に生き共に死ぬことが至上の幸せであると考える)、そしてあや編での自らを代償とする救いの上位互換として(あやと唯は一対一の代償関係だけど、ソルネは物神達全員を救う為に自分を犠牲にしようとした)、彼女のストーリーは存在するのか。うむ、色んな要素があって面白かった。


・あや編
ようやく唯失踪の秘密が明らかに。
ガチで死んでると思いこんでいたから意外ではあるけど、コレはどうだろう。もっと優夜と深く絡んだ要因であって欲しかったかも。プレイヤー側に「家族に所属してた唯」のイメージが作られていない。
唯の気持ちとして、生まれてこられなかったあやの為に犠牲になることは納得出来る。しかしだ、家族はそれを許していいのか? 全然本気で唯が犠牲になることを防ごうと思ってる様子がない。あやと唯を両方救う解も捜そうとしない。諦めるのはそれからでもいいはずなのに。他のシナリオでの執着心はどこへやったんだ。だってこのままじゃ結局唯は自殺になるだろ。それを許せるのか?と思ってしまった俺はあやへの愛が足りないのでしょう。とにかく違和感を感じた。


・本当に個人的な感想
何のかんの言っても紗雪が可愛すぎる件については誰の反論も許さない。
最初のエチシーンで子供が欲しいと言った紗雪の可愛さは本当にヤバイ。そりゃ優夜、世界よりも紗雪を優先するわ。一ルートがそれほど長くなくキャラ数が多いこともあって、心配していたものの・・・まぁ結局文月大先生の声なら余裕で萌えられるんだよ。強いて言うなら真雪と紗雪と優夜の3Pが無いのが不満。ステレオボイスでエ(以下検閲削除
あや編はなぁ。唯があまりにぞんざいに扱われていたのがどうにも腑に落ちないのです。家族の命は秤に掛けられないんじゃなかったのかよ。唯に執着してたのは優夜だけで、それも半年の捜索期間の間に気持ちに決着を付けてしまったってところですかね。(夢には出てきたけど、所詮「こうしておけば」の類だろう)


・このゲームをプレイして思い付いた素晴らしい家族構成
 嫁:玲亜 (Clover Heart's CV:文月かな
 妹:恋 (フォーチュンクッキー CV:文月かな
 ペット:紗雪 (桜華 CV:文月かな
圧倒的じゃないかこやつめハハハ!幸せすぎて脳がはち切れそうだぜぇ!
(オプションで母:涼子(ままらぶ CV:まきいづみ)、姉:要(ときどきパクッちゃお! CV:まきいづみ)もアリだ!)