戯画『パルフェ 〜ショコラ second brew〜』考察ネタバレ版・上  がんばれ、てんちょ!

少し前の感想と被る部分もありますが悪しからず。
凄く懐の深い作品だったかな、と。前作の粗い部分を綺麗に取り除いて、万人受けするように調整。オーソドックスな素材も、丁寧に調理することで充分可能性は広がることを示してくれる作品でした。んで、裏仕様ではものすごい変化球を隠し持っている。里伽子シナリオに関してはそれなりに心情的評価が割れると思うけど、作品一本踏み台にしただけあって出来は素晴らしいです。


美味しいものを食べた時、それが何故美味しかったのか気になる人はこの先をどうぞ。
テキスト量としては過去最大?流石に長すぎたか・・・19KB。


本来これを語る上では『ショコラ 〜maid cafe "curio"〜』を再プレイするべきなんだろうけど、ちょっとそれはあまりに時間がかかりすぎるので今回は無し。・・・なんか三日後くらいにはプレイしていそう。
当然共通世界の作品であるから、前作を強烈に意識している。
キャラ設定の類似性に関しては確実に狙ってるんだろうし、ストーリーラインも一部似通っている。(かすりとさやか、明日香とすずは特に顕著)この辺の手法としてはToHeart2とよく似てるかなー。


前作とは何が違うのか、と考えると、何よりストーリーの「純度」が段違いなんですよ。
あくまで元々用意された舞台であるキュリオ本店と、正に仲間達の手によって組み上げられたファミーユブリックモール店。つまり、仲間達と仁の関係の中でファミーユがどうやっても切り離せない存在になっている。『パルフェ』のメインテーマは何か?それは仲間、家族、その絆。誰一人欠けても成り立たない、というのが強く印象に残りました。舞台に用意された道具を全て使い切る今回のストーリーは、極めて純度が高いと言えるでしょう。
(前作の真ヒロインであるところの翠と香奈子の因縁はキュリオとは関係ないところにあった。店が物語に占める比重が違う。)


捨てキャラが居なかったのは割と予想外で、何でなんだろう?と考えてみる。
あくまで予想なんだけど、原因はヒロインの中に無口とかまったりキャラが居なかったからではないかな。やはり丸戸は良く喋るキャラをぐるぐる動かすのが性に合ってるんでしょうね。みんなでワイワイガヤガヤ的な空気を出せるからキャラがよく絡む。今回は徹底的に得意分野で確実に攻めてきた、と。
以下個別シナリオ編。ネタバレ上等。


・かすりさん 「がんばれ、男の子!」
捨てキャラなんて言ったのは誰でしょうか。(お前だ) いや、充分楽しめました。
丸戸の書く恋愛はいつも社会的にも人間的にも地に足が着いた感じがあるけど、かすりさんの場合はさらにその傾向が強かった。気持ちのすれ違い、目指す未来に対する道の遠さ、自分の能力へのコンプレックス・・・そんな普通の悩みに振り回されるかすりさんが非常に可愛らしい。デコ広いとか地味とか言うな。普通のエロゲなら有力ヒロイン級だ。シナリオベースは前作のメガネ、っていうか『パティシエなにゃんこ』のみちるさん?かすりさんの告白シーン(むしろマイクパフォーマンス)は『パルフェ』の中でも最強の告白。
面白いんだけど、それでもやっぱりサブキャラの時の方が生き生きしてるよな・・・こういうキャラの宿命か。


・明日香 「わたしだって・・・とろっとろ、だよ?」
ダークホース。いかん、シナリオもキャラも萌えすぎ危険。
高校生という、絶妙な年頃の「オンナノコ」が持つ魅力を全部詰め合わせちゃいました!という謳い文句がピッタリだろう。ファミーユのマスコットの名は伊達ではなく、気付いたらこの娘だけ三周目してました。素直で真面目な顔やイタズラっぽい顔、耳年増でえちい顔、年相応に幼い顔ととにかくたくさんの表情を見せてくれます。中の人の好演もあり(パルフェ声優陣の中では多分一番上手いと思う)、個人的には一番のお気に入り。
シナリオは前作のすず的要素を引き継ぎながらも、大学生と高校生の微妙な年齢差を用いた質の高い物になっております。もう高校生を通り過ぎた人達にとっては、自分の高校時代を思い出してホロリとくる場面もあるんじゃないかな。(エロゲは18歳になってからだよ。) 彼女がいたから今のファミーユがある。明日香の気持ちが、てんちょになりきっているほど心に沁みる。ファミーユを仁と同じくらい大切に思っている、そんな気持ちが。これは「ファミーユ」としての正式ルートとしても良いかも知れない。
明日香シナリオの評価の高さには「仁が格好良い」もあるか。相手のことを思う、ってのはこういう事を言うんだね。かすりシナリオでは若干へたれるから・・・しかしいざというときは外さない、それが仁。
しかし実にけしからん乳だな!修正してやる!(もみゅもみゅ)


・由飛 「ごめん・・・考えたこともなかった・・・」
さて、この池○をどう扱うべきか・・・
ショコラ伝統?(二作しか無いが)であるところのウザいキャラを確実に狙って確実にこなしてくれる、ある意味貴重な存在かも。ストーリーの内容的は花鳥家の確執を一手に引き受けて解決してしまうので、玲愛シナリオをごっそり食って美味しく仕上がって・・・というか玲愛の漢らしさに泣いた。冷静に考えれば、由飛は充分すぎるほどメインヒロインになってる。一見中身が軽そうなだけに、思いの外ヘビーで驚かされました。それ以前にもブッ飛んだ言動で驚かされっぱなしですが・・・
とにかくピアノに関わる話は個人的トラウマを刺激しまくりで、まともに見ちゃいられねー。
「エオリアンハープ」なんて俺にはもう弾けない。もう忘れた。


・玲愛 「がんばれ・・・私の店長!」
全てのツンデラーのために。
エロゲにおいての基本、キャラ特化の典型。とにかく会話のテンポの良さに悶えろ。喧嘩しろ!言い争え!そしてイチャつけ! バカップル、嗚呼バカップル。結局最初から最後までバカップルだ。相手に溺れるのが恋ならば、これ以上の恋なんてあるか。
二人が対等な立場であるケースはこの作品ではこのシナリオだけだね。パートナーとなり得る資格、つまり里伽子の代理として仁が無意識に欲していた人が玲愛だった。惹かれ合うのは当たり前。だから、最後にファミーユ本店を建て直すくだりは、里伽子とファミーユ本店を立ち上げた時の再現なのです。由飛との確執を上手く解決して無いじゃないかと言われるけど、それはこのシナリオの本質じゃない。(だから問題解決は全て由飛シナリオに一任した。) 一緒に夢を叶える、大切なパートナーを得る、仁の為のお話。
このシナリオは一段とサブキャラが光ってますね。明日香、由飛、里伽子、板橋店長、そして川端さん(笑)。前作キャラまで動員しちゃって・・・翠が出てきた時、ちょっと泣きそうなったのは秘密だ。作画上も結構贔屓されてて、エロシーンの差分もキュリオの帰り道の夕日も最後の笑顔もちょっとクオリティ高すぎです。泣ける絵を描きおるわ。
そして風邪の時ですらツインテールをほどかない玲愛。もはやそれはアイデンティティ


・恵麻 「初恋は、そう簡単には、諦められないの」
一番優遇されてる、と思いきや一番ワリを食った人。
姉であり、義姉であり、初恋の人であり・・・とにかく役職は多いけれど仁流にひとまとめにするなら「家族」。当然里伽子の存在と対になっていて、赦しと痛み、保守と変革を表すはず・・・だったのですが、里伽子があまりに重すぎる為に彼女の狡い生き方が肯定されにくい。里伽子Trueシナリオの丁度良い踏み台になってしまいました。
もう一つの問題点として恵麻と仁が悩む「社会の壁」、姉と弟の恋の危うさをエロゲーマーは正しく認識出来ない点がある。姉ゲー妹ゲー量産で義姉義妹どころか実姉実妹まで手を出し始めたエロゲーマーにとって、それは当然のように越えて然るべき低い壁なのだ。前作のすずは馴れ初めそのものから物語をスタートさせることによって充分個性を出せていたけど、今回はダダ甘お姉ちゃんだから・・・ひたすら仁の為に、仁の為に。それが少々鬱陶しいと感じた人も多いだろう。そしてラストシーンまで里伽子に乗っ取られてしまった。実はこの人が全ての不幸を呼び込んでいるとの噂もある。
でも、里伽子への土下座は、ケジメとしてはすごく上質だと思った。姉バカ上等!




そして、全てをひっくり返す、里伽子Trueシナリオである・・・