OVERDRIVE 『エーデルワイス』 考察 ―― 高貴なる白

 (とりあえず自分はこの作品が大好きで、基本的に肯定的な立場であることを宣言しておきます。あんまりにもこの作品が嫌いな人には向いてないし、やってない人には本当に意味不明な内容なので、これを読んでからプレイして「騙された!」と言われても当方責任は負えません。悪しからず)

笑顔とパワーを詰め込んで 明日のため歌うのさ  (HAPPY GO!!)

 しかし肯定的な立場とはいえ、バカ要素と鬱要素を同時に取り扱うには少々練り込み不足の感じは否めないところ。直近で読んだTeam N.G.X.シナリオ担当作品は『Re:』だけど、大凡似たような印象を受けた。共通パートではそれほど違和感を感じなかったのも同じ。ゲーム的な緻密さ、あるいは展開に溜めが薄いような。シナリオの展開に物語的論理性はあるんだけど、その説得力と動機が弱いのかな。(その辺りのネガな印象は次回作で瀬戸口廉也が払拭してくれると信じてます)

「咲かせて欲しい」なんて言えない 気付いてPLEASE!   (蕾姫ってことで!)

 そう、『エーデルワイス』の比較対象として(一応)過去作である『グリーングリーン』シリーズが出てくるのは仕方のないことでしょう。OVERDRIVE代表のbambooも、今までの延長線的な作り方をしてると言っています。その分評価が厳しくなった部分もあるとは思いますが、鬱展開に関してはグリグリシリーズの段階からある程度その傾向はあったわけだし、それほどショックは受けませんでした。流石に遥花が某アニメのようにガチな焼死体になったり、みずきの足がスプラッタな感じに叩き潰された時にはヘコみましたが……そういう展開があるとすればなつめルートかなと予想してたので。芽衣先生が人間じゃないのは序盤の展開から何となく察せますね。 (公開されていた情報では、遥花がホムンクルスだろうかと考えたりしてました)

迷惑なのは 言葉じゃなくて 鈍感なハートなのよ   (ダーリン)

 もっと言及するなら、こういうシンプルな鬱展開に関してはユーザー側にかなり耐性が付いてしまっているんじゃないでしょうか。物語は麻薬と同じ、読めば読むほどより劇的で効き目の強いモノを望んでしまいます。コア化が進んだ今のエロゲという土壌と噛み合っていないのかもしれません。(この辺りは自分の印象論なので、ちょっと説得力が無いかな。広く受け入れられるゲームが減ってる気がするんだよなぁ)

反省しても後悔しねえよ それが男の人生さ   (アンパン男道)

 ただ、前半部分の賑やかな楽しさは未だに最先端の領域にあるのでしょう。三馬鹿+一志の四馬鹿、凜&さくらという名脇役とヒロインズの絡みがとにかく多い。キャラが大勢同時に動くこと、当たり前に生きているキャラを描くことは楽しさの演出には欠かせない。ずっと二人や三人のままで物語が進行すると、進展によって関係が変化する感覚が得られにくいですから。

サンセット 今夜は自棄酒上等バッチコイ!
サンライズ いつかは祝勝パーリィー   (サンセット・サンライズ

 音系素材は全体的に秀逸なのですが、やっぱり残念なのは絵の枚数で、どう考えても足りてない。絵素材の不足に関しては、『ef』をプレイして以来特に強く感じるようになりました。必要な場面に必要な絵が無い、これはゲームとしては大変よろしくない状況であると考えます。テキストが3行しか展開できないADV形式を使っているのであれば、本当に大事で情報量を上げたい場面では絵を使うしかない。立ち絵はともかくイベント絵では面白い構図を得られているように感じるので、あとは単純に枚数だけ。

「私、女優なんです!」   (顔ロード〜第6章〜)

 声に関して。芽衣先生の中の人は自分の大好きな鈴(ああいぃうう〜)嬢だったし、遥花のすっとぼけた感じの演技も面白かった。お肉の星の凜、どう聴いてもメインヒロインとしか思えないさくら、「春間ぁ」が可愛すぎるなつめ、拗ねさせたら最強の蘭とそれぞれに良い味を出してるんですが……問題はみずきだよなぁ。棒読みというか、間を使う演技をしてないというか。慣れてくると意外と快感に? 後半の可愛さを評価してプラマイゼロで。

ぎこちない 私を笑わないでいて 初恋の世界   (さくら日記)

 総合して、キャラクターから読めば非常に優秀な作品だったのでしょう。ヒロイン5人+凜&さくらの中に魅力的でないキャラが居ない。その中で鬱展開をやってしまったのが、良い意味でも悪い意味でも印象深くなったのかな。鬱展開にはキャラクターを使い捨てる勇気が必要で、愛着を育てすぎると取り扱いが難しくなる。純粋に恋愛として捉えている受け手には無遠慮な悲劇が重く、刺激的な物語を求める受け手には安易さが鼻につく。その匙加減は構成の手腕によるのでしょう。最近はどちらかに振り切ってしまうのが主流のように思います。

つかまえてDolphin love 消えないように 人魚の夢   (ダカラパンチ!)

 クリア順によっても評価は割れそう。最初に遥花ルートやなつめルートへ行ってしまうとほとんどの謎が明かされてしまうし、芽衣ちゃんの蓋を開けてしまうとみずきや蘭の背景の薄さを意識してしまうでしょう。なつめと遥花はルート制限をかけても良かったかな。自分は遥花ルートがトゥルーエンド、なつめルートがグッドエンド、芽衣ルートがエピローグだと思っています。(理由は後述)

AROUND THE WORLD 二人の為に
未来の為に 世界は回る   (AROUND THE WORLD)

 そして今回、シナリオ全体に最大の悪影響を及ぼしてるのは確実に学園長だ。彼女の性質・能力が一定でない、あるいは動機を一瞬でひっくり返してしまうところがシナリオの腰の軽さの原因としか思えません。黒幕であり歴史を背負う人間なら、もっと強固にキャラを組み立てる必要があるだろうし、彼女の歴史の長さを意識させる必要がある。清兵衛の登場から世界の解明は受け入れやすかっただけに、それが惜しまれます。

静けさの中で信じていた 君と重ねた赤いキス   (あいのたね)

 シナリオのバランス感覚としてはなつめルート辺りが良かったかな。なつめルートは善意が完璧な形で成就することが、世界観を総括するグッドエンドにふさわしい。遥花と同様にイベントCGにかなり力をかけていたところからも、元々双璧を想定して組み上げられていたのでしょう。それぞれ "オリジナル" と "レプリカ" の物語。(遥花ルートは個人的には好きであるものの、万人には受け入れにくいのが事実) 芽衣ルートについては作中で一番の悲劇ではあるんだろうし、転生エンドはいつの時代も賛否が分かれるのは分かりますが……ある理由により、芽衣ちゃんの命をそのままの形で救うことは有り得ない。荒唐無稽な物語でも、守らなければいけない原則はある。(この辺りは最下段、芽衣ルートの真実の段を参照)

白い花が幸せくれた
たとえ枯れても いつも胸に咲いてるの   (エーデルワイス

 みずきルートで与えられる大きすぎる不幸。これは可能性未来の中から清兵衛が観測したことによって生まれる遥花の死とは全く性質が違う。等価交換の原則として、イルカと泳ぐ夢を実現させた反動で地盤となる足が砕かれる、ということなのでしょう。(いささか過剰な対価とも思えるけれど) となるとあのペンダントは錬金術に関係する何かという考えが浮かぶが、宮さんが反応していないところを見るに賢者の石ほどの触媒ではなさそう。そして、緋紗江から生まれた賢者の石は "オリジナル" とは似て非なる物ではないかとも思う。遥花ルート以外で一志の前に "オリジナル" が完璧な形で現れるはずがない。とするとあの賢者の石は緋紗江が迷走した年月と清兵衛への想いから生まれたものであって、故にみずきの足を完璧には治せない。そういう意味では筋は通っているように感じたし、辛い事実の中に充分な希望は含まれていたと思います。

大事な物見つけた 晴れた日の午後に   (晴れた日の午後に)

 そして蘭=半脇役&エロ担当という無情な等式。重要キャラだと思ってたわけじゃないけど、もう少し丁寧な取り扱いをお願いしたいな……一般的ユーザーに求められていたのは蘭ルートのような素直さだったんじゃないかな……しかし最後まで明るい雰囲気だったのは良かったと思います。そういう意味ではシナリオの根本に絡まなかったのは正解だったのかも知れません。本気で一志に惚れているのが他のルートでも示されるのも可愛らしく、さくらや凜と同じ『エーデルワイス』の中の癒しだと信じてます。

がま口の底 光る宝物はキミだった   (Give me ×××!!)

 そして何よりこの作品を引き立てるのはボーカル曲。OPムービーの出来が良いのも関係しているでしょうが、「Ashberry」のインパクトは滅茶苦茶強い。遥花エンド後、あるいはなつめエンド後に聴くとこれがまた良く出来た詞だを分かる辺りも桑島由一作詞曲らしく。同様に「Remember」も作詞が、そして中原涼の起用が抜群にハマっている。シナリオのN.G.X作詞の「祝福の歌」)は『エーデルワイス』のグッドエンドであるなつめルートの歌として、驚くほどに爽やかな印象。エンディング曲の中でもこの2曲は出色の出来だったのではないでしょうか。(milktubらしいノリの良さから聴けば「AROUND THE WORLD」や「晴れた日の午後に」も捨てがたいのですが、EDテーマとしての出来は一歩譲る)

豊饒の空 降り注ぐ希望に
小さな胸高鳴らせて 大好きな背中追う   (祝福の歌)

 後発のボーカルアルバム「サンセット・サンライズ」の方でも素敵な曲は多い。歌い手に作詞させるというのはかなり冒険したコンセプトだと思いますが、yozuca*本人がbambooにPCを借りてプレイしてまで作詞したという「あいのたね」、遥花ルートでEDとして流れる自分の歌に泣いたという中原涼作詞の「Secret Garden」が生まれた奇跡には感謝したい。前者はなつめエンドのもう一つのEDテーマとしても通用するし、後者は凜の下着という要素からよくここまで書けたなという驚きが。「顔ロード〜第6章〜」や「アンパン男道」についてはもはや説明不要でしょう。

あなただけ 鍵はすぐそこ
いつか連れて行ってあげるよ 私の中へ   (Secret Garden)

 以上のように素敵な曲の多い『エーデルワイス』ですが、その中では忘れられがちな「マーガレット」の話を。
 サントラ・ドラマCD・ボーカルアルバムを特定店舗で買うと特典として貰えるCDに収録されたこの曲のインパクトはかなり大きかった。ホントはこれこそが本編に収録できなかった "最後の一曲" なんじゃないかな、と疑ってしまうくらい。この曲の作詞は中原涼ですが、これは遥花シナリオに合わせたものでしょう。(作詞したのが「Secret Garden」より後だとすれば、彼女は遥花ルートをプレイした後に詞を書いたことになる。読み方によっては芽衣ルートにも面白い効果を発揮する) これを一部の人しか聴いていない事実は『エーデルワイス』にとって大きな損失、かもしれません。物語を彩る歌曲は全て合わせて18曲、「Ashberry」に始まり「マーガレット」に終わるのだと思います。

はらはら花びら指先に乗せて 君の面影を抱きしめて
ほらこんなに 雪のように積もって   (マーガレット)

 一般的な話はこの程度にして、ここからは少し本編から逸脱した自前の解釈を展開。
 遥花ルートのラストで本当に遥花が蘇ってしまうことに違和感を覚える人が多かったようで。賢者の石を中心とする詠伝島の特殊性、物の理想形を別世界から引き出す錬金術の原理、伊吹芽衣というホムンクルスの存在、なつめルートや蘭ルートで示される並行的な "理想世界" 。これらから考えて、失われた生命の再生はどこかで実現する必要があったと思う。本来生命について突き詰めて題材にするにはもっと長い長い物語が必要だし、願いを糧に生まれてしまった技術の是非を問うには無理がある。ならシンプルに攻めよう――それが遥花ルートだったんじゃないでしょうか。多分、遥花を再生することが出来なかったら、この作品に対する自分の評価はもう少し厳しくなっていたでしょう。遥花が死ぬなんてことは有り得ない。モラルだとか倫理だとか、そんな意味のない制約を超えて、本気でそう思う。

眠り続けていた夢はまるで シャボン玉のように弾け飛んだ   (あいのたね)

 作中ではほとんど語られない、地下の "オリジナル" の賢者の石について。遥花が生き返ることに関して等価交換が成り立っていないと考えるなら、あの石に特殊な条件があると考えるのが普通。某有名錬金術師漫画ではないけれど、 "オリジナル" の原料は人間の命としか思えない。例えば学園長がなつめルートで行ったように、過去に誰かが島全体を炉として多数の人間の生命から錬成したとすれば、島を支える原動力としても遥花を再生する鍵としても充分だろう。遺跡が存在する程度に人間の痕跡が残っているのに、清兵衛の時点で青空家所有の無人島となっていることからも、その錬成は過去の青空家の人間により錬金術の実験場として環境を整える為に行われた、とも考えられる。(清兵衛が見つけた痕跡はその錬成によるものか。あるいは学園長と同じ願いの元に誰かが独断でその錬成を行い、本人ごと取り込まれたか。そうすれば青空家の人間である学園長が "オリジナル" の起源を知らなかった理由が分かる。本当に星の欠片である可能性も充分あるけれど、考察としてはイマイチなのでその説は本編に任せたい。伝説自体も過去を隠蔽するためのモノだったように読めるし)

だからきみともう一度だけ もう一度きみだけ
神様のはなし声 耳をふさぐように   (Remember)

 そして、春間という姓にも伏線が配置されていた形跡があります。清兵衛は春間の系譜か、あるいは一志が清兵衛の可能性転生体? 一志が錬金術に連なる者で、シンクロする要素があったからこそ清兵衛に選ばれたようにも見えるし、そうでなければ序盤の一志がなつめの "理想世界" にアクセスできる必然性も "エーデルワイス" を咲かせた事実も見えてこない。(後者に関しては "恋に落ちてしまったから" と考えるのがロマンティックではありますが、推論は常に無粋であるべき。ましてや "エーデルワイス" は賢者の石の前段階とも言える存在だし) 一志の父親と妹については情報が断片的に示されているので、おそらく初期段階のプロットでは春間家に関する設定に言及する予定もあったのだろう。加えて、遥花ルートの中盤以降で一志が清兵衛の記憶世界にアクセスできたのは、 "レプリカ" の賢者の石(なつめの血)が影響しているのかも知れない。特異点としての一志には充分条件が整っている。

ここじゃないならば どこへでも行こう
好きな場所へ 今すぐに   (Remember)

 (やや微妙に記述ではあるものの)オリジナル芽衣の事故にも介入していたように見えることから、清兵衛が平行した世界から願っていたのは、詠伝島と緋紗江に関わる全ての人間の幸せであったのでしょう。そう、「生きているような」と表現される "オリジナル" の中には、まだ生きていたかった人間の生命と引き換えにした願望、未来、可能性が封じ込められている。だから緋紗江と清兵衛の願いに反応して別の世界を作り上げ、願望器としての役割を果たすようになった。(なつめルート参照) 一志は "オリジナル" の力によって、物語の最初の段階で "遥花を救う者" という存在意義を錬成された。他のルートでは遥花の死自体を回避することで成されるし、遥花ルートでは命を吸った "オリジナル" を咲かせて、もう一度命に還す。

僕たちは 指を絡め歩き出した
二人 同じ気持ちのままずっと   (Ashberry)

 そう、遥花は一志の手によって生き返るのが当然。そんな、当たり前に幸せなお話。

それはそう 白い花咲く日曜日
夢は覚めず 愛の意味を知った   (Ashberry)

 もはや本編とは離れたところで展開される妄想ですが、瞬間的に考えるだけでもこのように色々思い付くので、遥花シナリオは自分の中では充分に結論付けられています。幸い錬金術のお陰で簡単に曲解するだけで説明可能だし、花の中の液体は賢者の石が人間用に転化したエリキシルがモチーフだと思える。ファンタジーに関する知識の有無が物語に対する認識を左右するのではないでしょうか。実は遥花ルートではなつめも救われている ( "オリジナル" の力が遥花に費やされる為 "理想世界" が消失し、なつめは現実世界の肉体に戻る) のもポイントの一つ。

始まりを願うと 終わってしまいそう そんな悲しい予感   (マーガレット)

 そして、『エーデルワイス』最後の砦は伊吹芽衣
 外部的な存在が示唆されている、芽衣に宿った魂の正体とは何だったのでしょうか? 惹かれ合う魂に反応する "オリジナル" 、芽衣が最期に語るおとぎ話、そこに咲いた "エーデルワイス" ―― 多分、芽衣の魂は "オリジナル" そのもの。島で愛し合った緋紗江と清兵衛を見守っていた、 "オリジナル" に封じられていた "女神" 。詠伝島の特性を利用して完璧なホムンクルス目指して芽衣が造られた際に、ずっと緋紗江を見ていた彼女が "オリジナル" から引き上げられた。世界創造の根源としての "オリジナル" の性質とも直結し、彼女こそが『エーデルワイス』全ての物語を形作った。(平行した可能性については遥花ルートで清兵衛が語る通り)

そっと消せるように 確かめるように 小さな花に託して   (マーガレット)

 女神伝説は神として崇められた女性にまつわるもので、島に清兵衛の事故のずっと前に人が住んでいたことを示していて、その上に永遠の繁栄の為に触媒として封じられた "女神" というイメージが浮かぶ。それを証明する手段はないけれど、少なくとも "オリジナル" 誕生の経緯は美しいものではなかったように思います。(青空家の系譜が神話級のものであったか、女神の成立していた時代が比較的近代か。遥花ルートの段の説と反することはない筈) ……ですが、何れの経緯で生まれた "オリジナル" だったとしても、その内なるものの発露が芽衣であり咲季だったなら、それが本当に美しかったことだけは間違いないでしょう。

繰り返した恋心 零れだして止まらない   (マーガレット)

 伊吹芽衣の転生体である春間咲季は、何故詠伝島に辿り着けたか。それは咲季が、芽衣の願いを受けた一志によって錬成された存在だから。 "オリジナル" の意志に呼びかける名前を与えることで、愛する人の元に帰ってこられるように。かつて緋紗江と清兵衛の恋に憧れた女神を、同じ舞台に立たせるために。全ての根源に至るという意味では芽衣ルートは遥花ルートの遥か上空、真実の向こうのエピローグだったのかも知れません。何も持たなかった芽衣に触れた一志は、その愛によって遂に完全な生命を錬成したのだから。不完全な芽衣は黒化の過程で死に、男性原理と女性原理を得ることにより理想形の咲季へ生まれ変わる――その先には、今度こそ本当の幸せが待っている。

はらはら花びら指先に乗せて 君への想いを呟いて
ねえ 微かな夢を描いた空に   (マーガレット)

 自前の解釈が多く必要なのは少し残念ではありますが、充分に面白かった。何というか、物語の愛し方について少し考えさせられることになりました。どんなに完璧な物語にも生まれない愛着を生む力があって、ありきたりでもあざとくても全然構わない。そんな愛すべき物語に言葉を尽くすのは錬金術と同じ――この物語を錬成する為に心象世界から理想形を引き上げること、なのかもしれません。

届きますよに 白い花に願い込めて   (マーガレット)