sirius『魔法はあめいろ?』  全てはツンデレの為に?

僕達は、魔法みたいに、恋をする。

久し振りにエロゲの感想書いてる気がします。定期的にやらないと思考をまとめる能力が下がるのでイカン。ネタバレはあまり無いと思いますが、長いしアレなので例の如く隔離。



一昨日の考察の書き方についての記事によると「あらすじにも一定の需要がある」らしいのでこちらに。これはオフィシャルの紹介文なんだけど、もうちょっと短く印象的にまとめた方がいいと思うけどなー。普通の感覚なら、あらすじを読み終わる前にウィンドウ閉じる。

基本的な要素としては「能力」「教育実習生」「短い期間で恋に落ちる」「女の子の友情」。
メインキャラの三人はいわゆる仲良し三人組であり、主人公と「能力」の秘密を共有する仲間であり・・・と随分濃密な関係。この作品の優れたところは、まず第一にお互いの関係性をしっかりと確立出来てるところにあると思う。ステレオタイプなキャラ設定ではあるんだけど、主人公を含めたグループの中でそれぞれがどういう役割を占めるかをちゃんを定着させている、というか。これはキャラが生きるか死ぬかの問題に最初に関わるので重要。(特にキャラ萌えゲー)


がしかし、だ。そうやって見えないベースはしっかりしてるはずなのに、上に乗るテキストとか会話は実にクセが強くよろしくない。少し前にペダンティック過ぎる文章の項で挙げたように、誰も知らないような知識の応酬で進む会話文とか、いちいち回りくどく何かに例えたがる主人公の思考文章とか、読んでて非常に鬱陶しい。一人一人の心理描写がそんな調子なので、最終目標である「恋愛の成就」に対して真っ直ぐ進んでない様に見えてしまう。それはこの種のゲームでは致命的だと思うのですが・・・


さらに鬱陶しさを加速させるのが異常に噛み合った会話。こちらはキャッチボールは友情を冷めさせるの項が詳しい。いや、友情を冷めさせるというよりはプレイヤーを冷めさせる感じか。それぞれが目一杯に振りかぶって剛速球を投げるので、会話が全然軽妙にならない。重要な場面ではそれが必要だけど、日常会話が常にそんな感じだと疲れちゃうよなー。(ひよこに関しては別。そういうキャラであることがストーリー上必要なので)
ひよこルートにおける最終的な告白イベントの会話の鬱陶しさといったら!こいつらは何でどうでもいいことをループしながら喋ってンだ?ある意味前代未聞のイラつく告白。


この辺の原因はやはりシナリオライターの「テキスト」能力の不足だと思う。テキストを書くのとストーリーを書くのには別の能力が必要、といつも書いていますが、このライターさんはその辺のアンバランスさが顕著。ついでにプレイヤー感情のコントロールが上手くないようにも感じました。感情の曲線が昇るところではそれを煽り、落ち着いてきたら上手く落とす、期待は裏切らず予想は裏切る。感情の動き始めの方向と反対側に物語を動かして出鼻を挫くと、やはりプレイヤーとしては冷めてしまうんですよね。(特にアイキャッチ!タイミング悪いし多すぎるし。もっと考えて配置して下さい。)


さて、じゃあ良いところは・・・というと。やはりキャラが可愛いところでしょうか。(身も蓋もねー
いやまぁぶっちゃけて言えば環が。ちっこいけれど巨乳でツンデレ。言うなればツンデレの中のツンデレ。「ツンデレであること」を命題として作られているキャラなので、要所要所がキッチリ押さえられていて非常に美味しい。良いツンデレには自分の能力への自信と(その能力に依らないところでの)裏返しの自己否定がある、と勝手に思っているのですが、そういう部分は良く書かれていました。
そこへすかさず反転のデレ!恥ずかしい台詞連発でまっすぐ見てられません。うわーあの子がこんな恥ずかしいことを!というプレイヤー心理をくすぐりまくり。それでいて関係に堕ちるだけではなく最後には環らしくしっかりしてみせる、というところにツンデレへのこだわりを見た。その精神に感動した。
表情も豊かで、ツンとした横顔の表情差分まであるのには「分かっておるのう」と思わず唸る。横顔薄目で頬を染める立ち絵は環のベストショット。ツンデレはモードが二つある分表情豊かである必要があると信じてます。原画のミヤスリサさんは超グッジョブ。(他のキャラも表情差分は充分。強いて言えばイベント絵をもう少し増やして欲しいかな。)
花苗やひよこも標準以上の良いキャラだと思います。環が個人的にど真ん中ストライクなので見えにくくなっただけで。つくづくライターのクセの強さが悔やまれますな・・・


とりあえず最初から先生すきすきーオーラが漂っているので、ぬるい甘い恥ずかしい恋愛が出来る・・・と思いきや、主人公が強引なんだか後ろ向きなんだかよく分からない上に童貞臭い(俺もか・・・)ので色々と逡巡があり、あっさり一対一の恋愛関係にはなれません。こういうのは女の子同士の友情モノでは定番なんですかね。一対一の恋愛に至る前の、みんなで仲良くご飯食べましょー的雰囲気の方がこのゲームの本質か。
短い期間で出来上がった関係に対する「この先も関係が続くかどうか」にアプローチがあったのは良いと思います。「能力」を発端とするある種の吊り橋的作用が見られるので、関係自体に依り処のない不安定さがありますから。


以下少しネタバレ濃いめ。
「能力」とか『魔法はあめいろ?』と言うタイトルに全然意味無いじゃん、と思っていたらメインヒロインは花苗だったんですね。能力へのコンプレックスや雨の扱い方、そして何よりOPの歌詞に一番即しているキャラ。なにげにストーリーでは一番優遇されているかも知れません。今考えると、一番最初に声をかけてきたのが大人しいはずの花苗という時点で気付くべきだった。環も傘の押し問答、能力目当て疑惑とそれっぽいイベントはあるのですが・・・ひよこはもはや関係ないキャラ。おまえらイチャイチャしたいだけちゃうんかと小一時間(ry ストーリーはそんな感じだがエロシーンの数はひよこ4環2花苗1なんだよなぁ。あれか、ひよこはエロ担当か。俺にもっと環とのらぶらぶHを寄こせ!(脳が可哀想なことに
そう、この作品の良いところでならOPソングを忘れちゃいけない。作品中の要素や雰囲気を取り込みつつテンポ良く。I'veではKOTOKOに次いで好きな詩月カオリが歌ってるのも好印象。KOTOKO作詞であるというのも忘れずに。買うならOPフルバージョンの入ったサントラつき初回版がオススメ。


総合的には悪くないです。むしろ好き。メーカースレによると絶望的に売れてないらしいですが、そんな感じのソフトじゃないのになぁ。結構気になるメーカーになりました。


ここから戯言。
何のかんの言いつつ思い入れは強い。惜しいなーと思う点が多いからかな。ライターが・・・あれだ、三流レビューページみたいな文体だったね。実は近親憎悪だったという罠。構造的にはひよこと環のストーリーが対称になってて、花苗のストーリーは環のそれのグレードアップ版、とも言えるかも。恵美先生に触れなかったのはひよこ以上にメインに関係ないせい。多分あの三人と対称的になるような設定にしたんだろう。ああいう打算的なヒトの方が安心して愛せる、と思うのは臆病者の思考だろうか。
名台詞は環の「ちゃんと、抱き上げて下さい」と、ひよこの「いっ、いいトコ見せられなかった代わりにパンツを見せてみましたっ!」(笑)。 「言わないと、通じません」も良い。この台詞はライターがこの作品に込めたかった意図なんだろう。(失敗してると思うが) ・・・これだけ仲がよく見えても言わないと通じない、というのは切ないけれど多分真理。
ミヤスリサ氏の原画が時々崩れるのは仕様?充分カワイイ絵を描かれているので絵に関して満足はしてます。おぱーいがでかいにも関わらずすんなり受け入れられたのは僥倖。


声に関して。環役の紬叶慧さんの演技は、気持ちが入ってるような感じでとても好印象。(滑舌抜きでね) 涼森ちさと田中美智等と同じくVA系声優だからなのか、出演作は結構あるんだけどあまりメインキャラとして聴いたことが無かった。(『さよならを教えて』位) (ラ行の舌の感じとかからするに)ロリ系用の声で演じられたのだろうか? 今度は大人系の声を聴いてみたい。
ひよこ役の吉川先生は・・・頑張ってるなぁ、と。(笑 アウェイのキャラだしねー。でも先生ならあの程度の台詞では噛まない。うん。


しかし、VA系のエンジン・REALLIVEって何であんなに使い辛くてカスタム項目が少ないんだろう。せっかくグループで共用するんだから高性能なエンジンを一つ開発してやればいいのに。高機能にすると社内の弱小ブランドでは扱うことすら出来ない、とかだったらイヤだな。nbkz氏曰く業界に足りない人材は「強いて言うなら構成さん」らしいが、弱小メーカーにとってはプログラマが大きな壁になると聞いたこともある。


短くまとめろ、って冒頭に書いてこの長さは・・・今は反省している。関係者の方々に謝りたい。しかし環ラヴ。
   関連:D.N.A.Lab.Online (原画・ミヤスリサ氏サークルページ)
       Sirius Official HomePage(公式)
         人気投票で一位になった環の壁紙が公開中。やはり環は良い。