『うさみみデリバリーズ!!』感想  預かり物は丁重に。挨拶は元気良く。 (ネタバレ無し)

2009年。
ここは赤道直下、ミクロネシアの近くに位置した太平洋のど真ん中。
日本国千葉県の水上都市・新船橋市
通称『浮島』。

そしてオレの名は市橋Q太郎。
船橋市朱雀区にある、(有)鈴沢宅配所でバイト中の宅配員(デリバリスト)だ。

宅配屋(デリバリスト)ってのもSF設定も珍しい作品。
どこを見ても評価は載ってないし中古屋では二千円台で売られていて微妙に不安だったのですが、
やってみればちょっと短いながらまぁまぁ、わりかし良くできたゲームなのかな、という感じ。
シナリオ的には表がコメディ風味で裏はシリアス、ありがちなエロゲ風フォーマット形式なのですが
かなーり濃い目のヒロイン達と珍しく骨のある主人公、意外な程細かく拘っている(というかハッタリの効いた)
SF設定によって結構印象的なゲームになっている。
(ツッコミ処は沢山あっても魅力的な世界になっている、というか)
しかしそこはすたじおみりすの作品、当たり前のようにバグが点在。
実際確認出来たものだけでもBGMの多重演奏、立ち絵が分身、SEの鳴らし間違い&重複等々。
バグをバグのまま製品化するみりすにはいつか鉄槌が下る。


キャラについて。
個性が立ってるという意味では相当優秀な部類になる。個別イベントは少ない癖に印象は強い。
相当ぶっ飛んだ人達が各種類取り揃えてあるので、退屈することはないかも。
何より濃いのは主人公なんですけどね。事あるごとに「それはオレが宅配屋(デリバリスト)だからだ!!」なんて叫ぶ愛すべきバカ。
こういう風に仕事に命を賭ける主人公ってのは、見てる側として非常に好印象だったり。なかなかエロゲでは珍しい。
レディースモード吉川先生のねこ、青山ゆかりツンデレ少女・おたま辺りが声ヲタ的には楽しいのですが
しかしここは金髪ロリのべるのを推す。ロリコンと自覚している人なら間違いなくハマってしまうでしょう。
北都南のロリ演技は世界一ィィィィィィ!!


シナリオについて。
前半はコメディタッチで。登場人物の個性の強さもあってそれはそれとして楽しめるのですが、真髄は後半のSFに有り。
浮島に起こる異変を、それぞれのキャラに関係の深い側面から解き明かしていくというカタチ。
篠宮DF、霽月研究所、アルベルトインダストリー、軌道エレベーター、要素は多いがお互いが関連してて面白い。
惜しむらくは回収し切れていない伏線・設定が多いことか。全部生かせば超大作にできそうだ。(詳しくはネタバレなので後述)
あくまでエロゲシナリオとして読むなら、べるのシナリオが珠玉。このシナリオライターロリの何たるかを心得ている。
未発達故の美しさ、脆く儚い体躯、それに触れる背徳感、底無しに男を引き摺り込む魔性。
こういうロリへの情熱を感じるシナリオは『家族計画』の末莉シナリオ以来か。ていうかロリコンが書いてるとしか思えないっす。
違う側面としてはツンデレが妙に多い印象があります。おたま、ねこ、響子さんや莉央が広義でのツンデレに該当。
やはり声優にはうるさいすたじおみりす青山ゆかり大波こなみツンデレ向きの中の人を用意している。
ラストはややオチが弱い気はするけど、紀里亜シナリオのオチが最高に笑えたので許す。
全体としては佳作やや上って感じかな。アイデア勝ち。