新海真「雲のむこう、約束の場所」雑感 再会、そして。

公開初日、舞台挨拶付の第一回上映に行ってきました。

名駅の南側後ろ側前側

10:50の開始に対して10時に到着したのですが既に並びが外まで。
入ったときには140席が満席で思い掛けず立見に。正直ちょっと油断してました。
新海真の知名度が測れなかったし、公開がシルバー劇場一カ所のみという補正もあったし。
地方人にとっての舞台挨拶=レアイベントである事実もわりかし効いていたような。
まぁそんな事はいい。問題は本編だ。
見てない人にはあまり伝わらないかも知れないけど一応感想。
客観的に見たら、結構「何でもない」作品だったように思います。大作ではない、小さくまとまった印象ではあった。
前から言われていた通りセカイ系というのは割と真実だろうし、一緒に行った友人の「中身がない」「雰囲気だけ」という言葉も否定しきれない感じはある。
でも、もう一回見たいなと思う程度に楽しめたのでおっけーなのだ。そういう作品。
新海の作品には「Wind」「はるのあしおと」のOPムービーでしか触れていない自分でも、始まってそう経たない内に
新海ワールド全開だな、と思わずニヤニヤしてしまうような映像の創り方。
空、水面、廃駅、工場、街、学校、「塔」、ヴェラシーラ。どの場面をどの断面で切り取っても彼らしく美しい世界が広がっていて、
世界の呼吸みたいなモノまで聞こえそうな、そんな感じ。そしてその上にヒロキやタクヤ、サユリが立っている。この物語の観測者として。
大袈裟に言うなら、見る感覚より体験する感覚。感動より清々しい余韻。
文章ではなかなか表現出来ないこの感覚は、映画(映像)という媒体の力を充分に生かしている証拠、かな。
個人的には、見る前から求めていたものと作品から供給されるものがぴったりと一致したお陰で満足度は非常に高い。
帰ってくるのが惜しいくらいに浸れる、輝く世界を創り出せる人間はそう居ないんではないかな、と思います。
ストーリー的な部分に関して。ネタバレかも。
並行宇宙や戦争というSF要素についてはギミック以上の意味はない、と踏んでいるのですが、その辺を期待した人にはちょっと肩透かしかも知れませんね。
ただこれらのギミック無しであの世界は出来ないし、多くの名場面はこのギミックに関わるところで展開されている。
多少の無茶や不整合を気にしていると損をすると思う。(その辺もしっかり造ってくれれば満点だったのですが、それは流石に贅沢か)
気に入った場面としては
・廃駅でサユリが水に落ちる前、塔が崩壊する「夢」を見るシーン
・ヒロキとサユリ、病室でのひとときの再会シーン
・ヴェラシーラの発進から離陸、開戦下の海峡を飛び抜けていくシーン
・ラスト、塔の周りをゆっくりと旋回しながら、陽の光を浴びてサユリが「帰ってくる」シーン
やはり病室での再会は、こう、心が震える感じがしました。世界の革新にも似ているような。
ラストの「おかえり」は、サユリの涙と合わせて切なく。この作品そのものを象徴しているような。
そして流れる「きみのこえ」。最後まで綺麗に締めてくれました。


以下戯言。
ちょっと不安だった声役も、見てる間は殆ど違和感を感じませんでした。
サユリ役の南里侑香の声の可愛いことは! 二人が惚れるのも無理ないってモンですよ。
実は一番最初に見に行こうと決めたのはヴェラシーラのデザインが凄すぎたからです。
劇中で飛ぶところを見たくて見たくて仕方なくて、思わず見に行ってしまった、と。
実際劇中で動いてるのを見てさらに惚れた。まさかロケットエンジンで動いて、巡航では反転プロペラになるとは。
個人的にはメーヴェと同じくらい乗ってみたい乗り物に位置付け。
無限に存在する並行宇宙の存在とその干渉はSenseOffを彷彿とさせる。
世界を浸食する塔は、可能性から世界を読み替える透子。違う世界のサユリに出会うヒロキは、一言で世界を変革する珠季のよう。
DVDが出たらもう一度見直そう。SF部分にも発見があるかも知れない。
とりあえず今のところは自分の印象のみ。残りはまた後日。