法政大学C.L.C主催 「minoriの秋、実りの秋」 レポート

  • 遅くなりましたが、11/01に開催された法政大学・自主法政祭でのminoriトークイベントのレポートなど。
  • 一応は時系列順になってますが、前後してたらごめんなさい。個人的な所見をかなり挟んでいるので、純粋なレポを読みたい人は他のところへ。カッコ書きになっているところがありますが、社長の発言を正確に書き写したものではなく表記上の演出なのでご注意ください。質疑応答の部分に関しては抜けが多かったり、オフレコ指定で書いてないものもあります。
  • 法政大学外濠校舎3F、14:00開場。すぐ始まるのかと思ったらイベントの開始は15:00だとか。そこまで早く開ける必要はなかったような……整理券には14:00開場としか書いてなかったし。会場は大きめの講義室で、キャパは200人程度? 最初は入りが悪かったけど、最終的に7割くらいは埋まってたかな。私大だからか校舎がやたらとキレイで、国立育ちの自分には眩しすぎる。
  • コアなminoriファン(あるいはnbkzファン)は、以前あった東海高校での講演を想像してもらえれば雰囲気は近いかな。しかし開始時刻に先んじて酒井社長登場、15分前からなんとなーく喋りはじめる程度のユルさではありました。聴衆に大学生を想定しているためか、「お前ら分かってるよな?」的なお約束も多め。しかし昔よりは留保が増えたというか、危ない発言にはすぐフォローを入れる形になった気が。まあ、色々あったのでしょう。
  • 当然のように録画/録音禁止のルールがあったのですが、酒井社長本人から「後で確認するための音声なら録ってもいい」(音声ファイル直公開はダメ)との通達。それを受けて手持ちのICレコーダーで録音していたのですが、イベントが長すぎて途中で電池切れ。この記事の作製にあたっては音声は参照していません。記憶とメモのみ。
  • 同日同時刻にELISA オン・ザ・ステージ in 明治大学〜が開催されていて、内容的には「向こうが表でこっちは裏」だとか。そりゃそうだ。説明用のppt資料は用意されていたものの、「Wikipediaからコピってきた」程度の内容。それに補足やジョーク(本人曰く「嘘9割」)を入れつつ解説、みたいな流れに。
  • まずはminoriの成り立ちから過去作についてなど。「minoriの作品を"どこから"プレイしているか」という挙手アンケートでは、『ef』からの人が1/3程度。全部やってる古参から一本もプレイしていない人まで、かなりバラバラな層が参加していた。
  • ソフトの発売年表をよく見る→8年かかって新作は4.5本しか出してない!という話(ファンディスクおよび『ANGELTYPE』除く。0.5本は『eden*』) 全く知らない人でも、追いつこうと思えば「2〜3日の徹夜で大丈夫」。minoriのブランドカラーからしてリリース間隔が広いのはそうおかしくもないし、ファンディスクは数に入れたっていいと思うのですが。自社の制作以外では他社の背景やデバッグを請け負っていて、直接の儲けとしては微妙だが副次的な効果が大きい。いろいろやってるよ、というアピールにも。
  • 初回版とか出すと管理が面倒なのでやりたくない、しかし出した作品はロットアップさせずに細々とでも売り続けるようにしている。(発売してすぐロットアップするのがメーカーとしては一番楽) 「だから新品で買ってね」とか。
  • ここから本題に入り、minori作品の制作工程についてのお話……とは言っても絵やシナリオについてはほとんど説明せず。この辺は誰にでも想像できる範囲だからあえて説明する必要はない、ということなのでしょう。ムービーのメイキングを中心に展開していくことに。
  • 歴代作ムービーを流しつつ、当時の思い出話など。『BITTERSWEETFOOLS』の作画は新海誠の手によるものだとか、『Wind』冒頭の恥ずかしいセリフは結城辰也が考えたとか、『Wind』ムービーは一月で作ったんだけど色塗りが大変だった(nbkz氏はみなも等を塗ってた)とか。旧作についてはピンと来ない人も多かったのかな。反応が微妙?
  • はるのあしおと』ムービー。ここから24fpsに。傘開き三連発は何度見ても壮観だ。自分もこのムービーでminoriに興味を持ったし、確かにこれがきっかけで知名度が上がったような気がします。この作品は法政大学市ヶ谷キャンパスと縁が深くて、白波瀬が印象的な冒頭の"あのシーン"は外濠の桜だとか、和エンドの公園がすぐ側にあるとか。
  • ef - the first tale.』&『ef - the latter tale.』ムービー。前者の方が有名だけど、後者の方がメチャクチャ手間がかかってるとか。(特にミズキの走りなど) 是非やってみたくて、『eden*』のムービーからは映画っぽいフォントが使用されている。そういえば、『ef』のビジュアルファンブックが年内に発売されるらしいです。楽しみ。
  • ef - the first tale.』のムービーを例に、コンテや仮組のムービーなどを見せつつ工程を説明。カットごとに時間を割り振り、アイデアは早いうちに出して入れ込んでゆく。 (完成形を知っているだけに)遡ると簡単にできてるように見えてしまうけど、実際に素材が集まって完成するまでには半年ほどかかっている。ムービーは金も時間も手間もかかるクセに、無料で公開しなきゃいけなくて大変。エロゲが発売前パブリシティに偏った商品である性質にも繋がっている。(これは後半の質疑応答で語られた内容)
  • ef - the latter tale.』のムービーでも同じように制作工程を説明……するはずが、肝心の動画が会場のPCで再生できず断念。「いろいろ大変だったということで」で締められてしまった。ムービーの話はここで終了。
  • ここからは、主催側から用意された『eden*』に関する質問に回答。
  • 「なぜ全年齢だったのか」→「みんながポルノポルノうるさいから」「全年齢だと販売面積が広く取れる」など。エロゲは専門店の棚回転の都合上、一週間で新作棚から撤去されてしまう。全年齢の作品だと回転が遅いので棚の良い場所を長い時間キープできる……というのは前のイベントでも言ってたかな。頻出の質問。
  • 「なぜSFなのか」→「SFを作ったつもりはない。必要性があってあのような設定になっただけ」など。要するに亮とシオンの"二人"ありきだったらしい。「合法ロリいいじゃん」には頷きつつワロタ。電気街祭りでシオンのエロいグッズを売ってたら、怖いobsnに「この子何歳なの!?」と訊かれ「100歳です」と返したとか。
  • 「実験作とはどういう意味なのか」→「エロゲはもっと色々な販売方法があっていいと思う」「時代の変わり目なんだから売る物が変わってもいい」など。フルプライスはユーザーの負担が大きく、実売で5千円当たりを狙うとこういう値付けになる。(これは全年齢化のところで回答) この辺りもイベントでは頻出の内容かな。
  • 「で、今何やってるの」→「『ef』ファンディスクは演出中、新作ももちろん仕掛かってる」など。ファンディスクの方は「期待して待っててください」とのこと。凪の話があるらしいけど、どこから分岐する形になるんだろうか……『ef』のCS版もいずれ出るとか。
  • エロゲの置かれた厳しい現状について。売上は全体に右肩下がり、P2P違法コピーによるダメージは今も大きく、現場の高齢化や規制問題も根が深く解決できていない。資金が循環しなければ成り立たない、メーカーにお金を流せばそれは新しい作品の糧になる、という。エロゲをプレイできる年齢の人間には説明する必要のない、当然の帰結だと思うんだけどな……
  • ここまでで1時間ほど。残りの時間はすべて質疑応答に。ここで問われる法政大生の知性……とは言いつつも学外の人も多いし、いつものminoriイベントと変わらないムード。序盤は手が上がりにくいようだったので、刺激する意味でもキャスティングの名義について質問してみた。回答はオフレコ指定だったので自粛。声優業界ってめんどくさいよね、という話でした。
  • 秋葉原電気街祭りの意図は、という質問。ビッグサイトのキャパシティが限界であること、搬入制限が厳しく販売物が行き渡らないこと、本来コミケは同人・アマチュアの祭典であることから、現状の企業ブースのあり方には無理があると考えている。上京できる機会が限られている人も多いので、コミケと同じ時期に別の会場で物販、コミケの企業ブースではパブリシティを中心に行うことで、リスクを軽減しつつ相乗効果を狙えるのではないかという。この考えには賛同できるかな。
  • 影響を受けた作品は、という質問。ゲームより映像作品の方が影響を受けているという話で、それは今のminoriの方向性と重なっているように見える。やたらと『メタルファイターMIKU』を推してたけど、大学生に分かるんだろうか?
  • minoriの歴代作品で好きなヒロインは、という質問。nbkz色(本人曰く「エゴ」)が一番出ている作品は『はるのあしおと』で、特に和には思い入れがあるとのこと。(前から言ってる内容かな) 作品の内容には口を出すほうで、その例として『Wind』望シナリオ・『はるのあしおと』和シナリオ・『ef the latter tale.』ミズキの独白・『eden*』ラスト周辺などを挙げつつ。業界ネタが好きそうな人の集まるイベントだからか、「こういう質問はむしろ新鮮」とのこと。
  • なぜ裁判を起こしたのか、という質問。ユーザーを信頼して、データをすべて展開した形で収録したい気持ちはある。しかし実際そうすると、違法アップロード等でパーツだけが出回ることになる。minori作品のEDはムービーだから、展開されて放流されると特に困る。もちろん訴訟を起こす前に警告を行っているが、聞き入れられなかった。心情的な詳細はオフレコ指定。
  • エロゲ業界の斜陽に対してminoriはどう対策していくのか、という質問。エロゲ自体が飽きられている印象もあるし、各ブランドは一点突破主義で生き残っていくしかないのでは、とのこと。プロテクトを厳しくすることはできるが限界はあるし、コピー問題がもっと酷くなれば(韓国のように)「サーバー側でデータを管理する形式、要するにネトゲ」にするしかなくなるかもしれない。
  • メディアミックスやグッズ展開の狙いは、という質問。基本的には「営業が来て、メリットがありそうなら受けるだけ」というスタンス。トレカなんかは特にそう。既に語られてるけど、アニメ化その他メディアミックスで直接的に儲かる要素は少なくて、知名度の向上みたいな副次的効果の方が大きい。コミケのグッズに関しては「熱心なファンからの営業があって、その企画に許可を出したり」ということも。
  • 面白かったのが、同人ゲームサークルやってる人からの「融資してください」という嘆願(?)でした。酒井社長としては「企画のプレゼン/計画書次第ではアリかも」(かなり意訳)とのこと。野心のある若い人は業界に絶対必要で、製作者の高齢化について再度言及。どんな産業も人の手が必要ですね。
  • この質疑応答がとにかく長く、90分(1コマ)予定だったイベントは結局180分(2コマ)まで延長。開場の14時から18時まで講義室に籠もりっぱなしという、なかなかハードなイベントでした。長すぎて後ろに立ててた予定が壊滅したとかイベント中に歯が欠けたとか個人的には色々ありましたが、nbkz信者は大満足な内容だったのではないでしょうか。