CUFFS『Garden』未完成騒動についての、ある☆×トノファンの雑感

 現状(01/26)では愛ちゃんと瑠璃のシナリオが存在しません。個人的には双子に次いで期待していた二人だけに、初報で聞いたときはかなり残念だったのですが……愛ちゃんは涼に対して立ち位置が遠いので、個別ルートがなくても作品の総体として問題にはならないかな、と思います。やはり問題は瑠璃です。デモムービーや販促でも大きく取り上げられていたし、涼との距離感からして明らかに重要キャラですから。


 雑誌等でCGが出ているにもかかわらずルートがない、ということはシナリオに問題があったのではないかと思います。今回はフルボイスですから、収録の都合上『さくらむすび』等よりも早くシナリオを上げる必要があったでしょう。ノベル形式の作品で演出やスクリプトに致命的な問題が発生することは少ないでしょうし、ここまで大きく欠けてしまった原因はそれくらいしか思い付きません。だとすれば、批判すべき中心はメインでシナリオを担当しているトノイケにある。
 (実際に書いた人間はトノイケだけではないようで、某ライターさんの名前が挙がっていますが……そのことに関しては、シナリオスタッフとして明記した上クオリティが保たれていれば、外注スタッフを用いることに問題はないでしょう。それらが事実だとして、そのヘルプを行ったライターがスタッフロールに明記されていない件を責めるのは当然としても、誰か一人が書かなきゃいけないという論調はどうかなと思います。確かに、あざみルートのテキストには違和感もありますが……それは摺り合わせの問題かな、と)


 やり方は色々あったと思います。作品規模を小さくまとめ、絵里香・瑠璃を軸に、双子のどちらかと小夜・あざみ・愛ちゃんの中の一人を攻略キャラとして、それを完成版としてリリースすればよかった。その方向転換は開発の初期には可能だったハズ。そうすれば、出てくる批判としては「フルプライスの割にボリュームが少ない」程度だったでしょう。今回のリリースは業界の常識に照らしても未完成、あるいは不誠実と言う他無く、現時点で出ている不満の大半は正当なものであると思います。


 ですが、それが何だというのでしょうか。甘いと言われればそれまで。このような製作を認めてしまえば、エロゲ業界全体にはマイナスになるでしょう。でも、『Garden』という作品はここにしかない。CUFFSという会社に関する議論とは全く別のところで、この作品は充分に魅力を持っていると思うし、それが軽視されて取り扱われるのはとても悲しいことです。


 決算の都合上だったり、開発資金に関わる何かがあったのでしょう。でもそれは、ブランドが喧嘩別れで無くなってしまったとか、書くべき誰かが亡くなってしまったという最悪の事態よりはまだよっぽど軽いんだと思います。放っておいても批判は誰かがやってくれる。一人くらい味方に回っても大勢は動かない。
 だから僕は、『Garden』をめいっぱい甘やかしたいと思う。この作品は、とても素敵だ。

構うもんか。僕は、この人のためなら罪も犯す。

 新規購買層が定着せずに離れてしまうのは仕方ないでしょう。しかしファンとしては、一度の失敗で見限ってしまうなんてことはできないんですよね。かつて『PRINCESS WALTZ』が竜頭蛇尾に終わった時に、すぐさま "でも次は大丈夫だよね" と切り返し、今『てとてトライオン!』に期待しているのと同じ。ほとんど同じ手順で騒動になった『Dies Irae』の時にも思ったのですが ―― 一度ミスしただけでゲームオーバーなんて、寂しいじゃないですか。ミスというには問題が大きいとも思いますが、それでも。
 (例が少し不適切でしたね。PULLTOPの人には申し訳なく思います。後に欠けたルートを作ると明言されたので、割と楽観的に見てる節はあるかも。この点で一つ誤解の無いように補足しておきたいのですが、今回の文章はCUFFSという会社の行為全てを肯定するものではありません。『Garden』という作品の内容と、会社の対応の不手際や拙さは切り離して考えたいな、という話です。自分が"次に期待"と書いているのは、今回『Garden』の内容がある程度評価に値するもので、次に生まれるかもしれない作品も楽しめるのではないか、という文脈によっています。繰り返しますが、CUFFSの行為を擁護するものではありません)


 瑠璃と愛ちゃんのシナリオについては後にフォローしてリリースするという発表が成されています。不満を持っている方にはどうかこれで怒りを静めてほしいと、心の底から願います。そして一人のファンとしては、いつか『Garden』は完成されるんだという希望を持って待ち続けたいと思います。『水月』からの日々を思えば、それは決して遠い日ではないと信じています。待つことには慣れていますから。


 こんな中途半端なモノを出した会社は責められるべきだ。納期通りに素材を仕上げた人間はともかく、延期・未完成の原因を作った人間は社会人としては失格だ。しかしそれらの瑕疵によって全て否定してしまえるほど、魅力のない作品ではないと思います。作品外の枠組を全部外して触れた『Garden』の実像について、少なくとも自分はそう思いました。瑠璃と愛ちゃんのシナリオが追加されることによって、さらに魅力的な作品になることを願っています。


 ……とんだ甘ちゃんだな、と思われるでしょうが、それでも書いておきたかったので。