まこみし文庫製作委員会 「まこみし文庫SP」感想 (戯言注意)

夏コミ委託販売で手に入れてからいつか書こうと思いつつ、気付けば冬コミ間近。半端に時間があるといつまで経っても書けないので、時間がない今敢えて挑戦。そう、委託その他でまだまだ手に入るしその分の販促だと思えば。(言い訳するな)
春、夏、秋、冬とだんだん分厚くなってSPでは遂に新書版476ページ。空の境界と並べても違和感が無い程。参加作家、絵師合わせて二十二人。これだけ大規模なSS本シリーズはそう簡単には現れないだろう。Kanonという作品が如何に大きな存在だったか、とか原作より大きい同人作品群という現象、とか現役で過ごしてきた世代にとっては色々と感慨深いものがありますが、内容とは関係ないので省略。ともかく真琴と美汐とぱんつが好きなら読むべし。それが俺達のジャスティス。
今回も作品数が多いので気に入ったものについて重点的に。


   「Asynmetric "Revision"」 text:せいる illust:西脇だっと
まこみし文庫なのにいきなり主人公が栞ってのはどういう了見なのか。(個人的には栞好きだから問題ないのですけど)
それはさておき、栞と美汐を真面目にぶつける話ってのは案外少ないので新鮮。年齢的には妥当だがシナリオの筋が違いすぎるせいかな。
この話の美汐はルート外、奇跡が通り過ぎていった側に属する人な訳で。
それを奇跡に照らされた側の栞が掬い上げる、という流れは心地よいものがあります。
自分の存在しないセカイからようやく帰ってきた栞が、セカイを拒絶している美汐に触れて
放っておけるはずがない、といったところでしょうか。
本編ラストで自分が救われた奇跡について語るシーンのアフターとしてピッタリ嵌る感じ。
彼女らしいちょっとカッコつけた台詞、少しだけ説得力を増しているのが成長の印。
保健室のシーンは二人で一気に喋らせ過ぎてしまった感じはある。勢いは良いが、ずっと長い台詞で読んでいると大変かも。
栞がかつて居たセカイを「シュレディンガーの猫」で表現するのは上手いなぁ、と思ったけど
美汐と絡める素材としては若干繋がりが弱いかな、とも思った。(偉そうに言える立場じゃないな)
そしてこんな話でもぱんつを忘れないせいるさんは職人。ぱんつ職人。


   「とりかえられる、なつ」 text:桜木克典 illust:村人。
これぞまこみしの基本形。真琴が思いつきで喋り出して、美汐がたしなめて、祐一が茶化す。
それに準オフィシャル設定:美汐の妄想全開で一人突っ走ってるあたりも素敵すぎます。
ややオチが弱い感じはありますが、真琴をぐるぐる回すシーンが面白かったのでOK。
やはりおばさんくさい乙女恋する乙女であるところの天野美汐は向かうところ敵無し。
敵があるとすれば祐一の鈍感さだろうか。(ダメやん)


   「万華鏡、くるくる」text:風見由大 illust:天野拓美
普通のほのぼのまこみし・・・と思いきや一転してシリアスに。
短いけどテーマにする素材、小道具、話の転換が噛み合ってて強く印象に残る。
非常にSSらしい、と表現するといいかも。
関係ないが、合わせ鏡なんて怖くて覗けない。良く出来た偽物が怖いから、只の鏡も怖い。


   「貴方の背中に届くまで」text:RUNAWAY
この作品の、真琴シナリオベースで美汐→祐一×香里という設定は多分世界に一つしかない。
まさか美汐を鞘当役に持ってくるとは。そんな酷な事はないでしょう、とか言われそうです。
個人的なイメージに、祐一は「繋いでしまう」人であると思っているので、こういう修羅場的展開も納得。
彼は諦める、とか忘れる、という選択肢を封じてしまう残酷な人なのかなとか思ったりします。
ゲスト稿の中ではこれが一番好き。


他にも猛烈にえちぃ「無限に遠い双極子モーメント」や、ぱんつはいてない「夏影、青空、雨上がり」等も好み。
今回は心なしか全体的にエロいですね。その中でも一番エロいのは天野氏の描く美汐なのは間違いないが。
シリーズ総計1432ページ、作品数48、計五巻のこのシリーズもこれでおしまい。
彼らのしあわせ探しに参加された作家の皆様方、お疲れ様でした。そしてありがとうございました。
(本当はこの一行さえ言えれば満足だったのは内緒。)
  関連:美汐誕生日SS「Asynmetric "星降る夜に"」text:せいる (日々是良日な日記より)